渋谷にはネパール料理店が数多くありますが、正直お洒落とか高級感といったものとは無縁でした。
もともと円山町など渋谷の周辺にネパールの人々が集まって住んでいたこともあり、渋谷のネパール料理の店もそうした同胞のための”食堂”といった感じ。店内はまるでネパールの庶民の家に遊びに来たかのような雰囲気で、くつろげるといえばくつろげますが薄暗かったりキメの荒い生地のクッションがあちこち転がっていたりと、お世辞にもお洒落と言えるものでなかったことは事実です。
しかしこの店だけはこれまでの既成概念を打ち破り、ちょっと高級な雰囲気。真鍮製のどっしりとした器にモダンな木の内装がこれまでと違った”レストラン”の空気を漂わせています。
セルリアンタワーのすぐ裏手、レトロなデザインのマンションが並ぶこの一帯は、周辺のオフィスで働く人々を狙ったランチの激戦区。ずらっと並ぶ洋食系の店の数々の他に、弁当を売るワゴンがひしめく一角もあり、昼ともなればたくさんの人々がここを目指してやってくるまさに”ランチのメッカ”。
その激戦区のなかでもこの店は人気で、ピークは外に行列ができるほどです。
店構えこそちょっと高級感がありますが、料理はいたって庶民的なもの。
なかでも特徴的なのは「ダルバート」。
豆スープ(ダル)とご飯(バート)を中心とした定食で、これにカレーのようなおかず(タルカリ)と漬物(アツァール)がつきます。日本で例えるなら「めざし定食」あるいは「煮物定食」といった素朴な田舎料理でしょうか。
食べ方は豆のスープもおかずも漬物もみんな一緒にご飯に乗せ、まぜて食べるというもの。正直なところ、私自身はこうした食べ方にはとても抵抗感がありますが、実際に食べてみると味はとてもマイルド。
豆のほのかな甘みが全体のベースとなり、これにおかずの香辛料と漬物の酸味や辛さがまざってふくよかな味になっています。
高地にあり、農業に適した土地や水に恵まれないネパールですから、こうした素朴で質素ともいうべき料理なのですが、その味は人々の心の豊かさを表すかのような滋味深い豊かな味となっていました。
たしかに、これは食べてみるべき一品でしょう。
また、インドと国境を接するためにカレーも本格的。
基本の味付けはマイルドですが、辛めを注文すればインド料理と遜色ないスパイシーなカレーも食べられます。
食べたのは3段階でいちばん辛くしてもらったマトンカレー。
羊肉のうま味がしっかりと行きわたったカレーはさらさらトロトロ。日本の米・ジャポニカをベースにしたもちっとしたご飯との相性もよく、特別に構えることもなく食べられます。
店には高級感を持たせながら、提供するのはネパールの人々が普通に食べる料理を丁寧に。
こうしたコンセプトは私たちに新しいネパール料理のイメージを植え付けていくのにじゅうぶんでしょう。
夜にどんな料理を食べさせてくれるのか、ぜひ一度確かめてみたくなりました。
みなさんもぜひどうぞ。
「ネパリコ」(渋谷・ネパール料理)
https://tabelog.com/tokyo/A1303/A130301/13116418/