昔、ベトナムに通い詰め、危うく18歳の子と結婚しそうに(させられそうに)なっただけあって、私はベトナム料理にはうるさい。
なかでも網目状の衣をまとった茶色の揚げ春巻をガシガシかじりながら、「333」ビール(バーバーバーと発音する)で流し込む至福よ。
しかし東京なら駅ごとに1軒はあったベトナム料理店が福岡では見当らず、無意識のストレスになっていました。
「敵国降伏」の筥崎宮を参拝したあと、ひとりでさまよったのはベトナム料理のため。九州大学なきあとの箱崎周辺がいまベトナムをはじめとするエスニックゾーンと化していると聞いたからです。
しかし、ふらふら歩いてもたとえば高田馬場のリトルヤンゴン、渋谷の円山町のリトルカトマンズといった民族ごとの集積感はなし。ネットで調べた最寄りの店も、住宅街のなかにぽつんと存在しています。
あれ?店の名前が違う。「39ベトナムフード」だったはずが「てれの食堂」となっています。
調べると同名の店が福岡都心部の南、清川という街に。どうやら吸収され支店となったのか。まあでも、本店はそこそこ評判の店のようで勇気を出して入ることに。
「バーバーバーをください」とちょっと通ぶって注文したら、若いお姉さんは「今日はありません」と素っ気ない返事。
あのちょっとカラメルっぽいコクと甘さがいいんだけどなぁ、と「333」を諦め、「サイゴンビール」にします。
そして思い出の「揚げ春巻」を注文。世界遺産の街・ホイアンでの幸福なひとときを思い出しながら待つこと15分。
やってきたのは「生春巻き」でした。
えー メニューの写真を指差しながら注文したのに、お姉さん間違えたのか…。
違うよ、と言ったら店長らしきお兄さんが出てきて作り直そうとするのでこっちが申し訳なくなってやっぱり生春巻きでいいです、と。(相変わらず気の弱い私)
食べてみるとこれがデカかった。普通のがコンビニの納豆巻きくらいだとするとこれは太巻き。海老が大きいけど皮も分厚くてこのひと皿で完全に一食分です。
続けてきたのが「ミークアン」。ベトナム中部発祥の汁なし麺で、これも思い出の一品。
大量にぶちまけてあるピーナッツなどの山から掘り出すきしめんのような黄色い麺が、ぺとんぺとんして口のなかが楽しい。
大量に盛られた野菜が別皿でついてくるのも現地そのままで素敵です。
結局、最初から最後まで日本人は私だけ。日本で働くベトナムの若者が憩う店でした。味も見た目も現地そのままの感じ。あのベトナムの誇りっぽい空気と、よどんだ暑さを思い出したい人はぜひ行ってみてください。
「てれの食堂」(福岡箱崎・ベトナム料理)
https://tabelog.com/fukuoka/A4001/A400201/40067034/