名物の「蒸し玉ネギ」は、素材そのもののほんのりとした甘味と鼻にツンとくる辛味の上に、醤油ベースのちょっと辛いタレが絶妙のバランス。
ただ玉ネギを蒸しただけではありますが、その良さを生かす工夫が凝縮されているかのようなおいしさが詰まった一品です。
この店があるのは新宿西口。
有名な「思い出横丁」、いわゆるしょんべん横丁から小滝橋通りを挟んで西の一角の片隅にひっそりとたたずむ小さな細長い店が、毎晩おじさんたちを暖かく迎えてくれます。
べニア板で四方を囲まれ、シミの入った天井からぶら下がった照明に照らされた狭い店内は、まさにおじさんたち、勤め人のオアシス。
ゴールデン街に続いて外国人観光客の見学コースと化しつつある思い出横丁よりも、ある意味リアルな生き生きとした店と言えるかもしれません。
もうひとつの名物料理「あばらやスタミナ」はマグロ、オクラ、山芋、納豆、生卵の黄身と、まさにねばねばのフルコーラス。なかでもオクラが非常に細かく刻まれているのが特徴的。
オクラはもうひとつの名物料理「あばらや巻き」で寿司飯の代わりに使われ海苔に巻かれています。これもたしかにスタミナがつきそうです。
そのほか定番メニューの「肉豆腐」は、豚肉を使ったあっさり味。
北千住の「大はし」や月島の「岸田屋」のようなこってりとした王道の肉豆腐ではありませんが、この店のものもまた食べやすくいい一品となっています。
風情や情緒を楽しむなら確かに思い出横丁でしょうが、しかし先に書いたように思い出横丁はすでに外国人観光客の見学・体験コースとなりつつあり、ある意味店にいる我々が見せ物になっているように感じる瞬間があるのも事実。
誰にも気兼ねすることなく、気の置けない仲間たちとわいわいと楽しく飲めるのは、隠れ家風のこちらの店かもしれません。
一度ぜひ。
「あばらや」(新宿西口・居酒屋)
https://tabelog.com/tokyo/A1304/A130401/13083565/