「中野区東中野の羊の鉄鍋とラグマン」。
「孤独のグルメ Season3」に出てきたのを見て、翌日すぐオフ会の会場として予約しました。
東中野の駅前にあるこの店。この街は2年程前によく通っていたために、不思議な店だなと気になっていました。ただ、1度ドアを開けてみたもののいきなり薄暗い空間に民芸品が並ぶその雰囲気に圧倒され、踵を返してしまいました。
また、このころ店先の屋台風の部分で朝粥の営業をやっていたため、いつか食べたいと思っていましたがあまり定着しなかったのでしょう、いつの間にかなくなってしまっていました。
“気になっているけど入る機会に恵まれなかった店”。
それが「孤独のグルメ」で取り上げられたのですから即座にオフ会決行です。
頼んだのは「テレビに出ていたメニューを中心に、料理だけで4,000円」のコース仕立て。なかでも羊の鉄鍋「カラヒィ」と濃い味混ぜ麺「ラグマン」、そして「ラムロースのたたき」を必須でお願いしました。
出てきたのは計13品。
ちょっとすごい内容でした。しかもみなおいしい。
最初に出てきた自家製チーズ「パニール」はふんわり柔らかな歯触り。
味もマイルドです。
「ラムロースのたたき」はほぼ生肉というのに臭みがまったく感じられず、肉からしみだすうま味と甘みが堪能できます。玉ネギと万能ねぎとの相性も良し。
とくにおいしかったのは「ラムのからし炒め」。
ラム独特の濃厚なうま味が多めの油と絡み合い、ふわっとしたカレー風の辛さと溶け合っています。これはご飯に乗せて食べたかった一品です。
カバブも遠火でゆっくり炙ったもの。
一口噛めばたっぷりの肉汁が口のなかにあふれ出し、羊肉のうまみを堪能できます。これほどのカバブは初めてかもしれません。
そして「羊のカラヒィ」。
カラヒィとはアフガニスタンやパキスタンで使われる、底が丸い鉄鍋のこと。日本でいう鍋料理の総称といった感じでしょうか。
濃厚なソースで煮こまれた羊の鍋は辛さや甘さが混然一体となったうまさ。全粒粉入りナンとの相性も抜群です。また「鶏のカラヒィ」も出ましたが、これはまたとろみのあるスープで、別のおいしさを堪能できました。
とどめは「ラグマン」。
ここまででかなりお腹いっぱいの我々の前に容赦なく登場したのは、ひと言で言うと「アフガン風担々麺」。
ほどよい辛さのタレとひき肉に自家製のパスタ風の麺がよくからみ、口のなかでぷるんっと踊るかのよう。辛さとうま味の調和がとれたまさに汁なし担々麺です。
ここまで13品。
今回はけっこう鯨飲馬食の集まりだったのですが、みなここでギブアップ。デザートを注文するどころか余ったものを持って帰れるものなら帰りたいと思ったほどでした。とにかく、想像を超えたおいしさと量に皆、大満足となりました。
ところで、我々がどんちゃん騒ぎしている傍らで、ずっと席が空くのを待っていた人々がいました。なかでも、エキゾチックな顔立ちの女の子の視線がとくに痛く感じました。
彼女たちにしてみれば「この店は私たちが普段の食事に使い、守ってきた店なのに、ちょっとテレビに出たからって日本人が大挙して押し寄せてきて、いい迷惑だわ。」なんて気持ちだったのでしょうか。その点はちょっと申し訳ない気もしました。
メディア、とくにテレビによって店が紹介されると人気が沸騰、たちまち行列ができてしまいます。
しかしその人気は瞬間湯沸かし器のようなもの。1か月もすると冷めてしまい、すぐに元に戻ってしまいます。ただ、元に戻るだけならいいのですが、店がこの間に天狗になってしまい、それまで店を支えてきた客にそっぽを向かれてしまうようになると一気に店が傾いてしまうことも。
私たちができるのは、いい店だと思ったらちゃんとまた来ること。店が長続きするようわずかでも応援し続けることなのでしょうね。
ぜひ行ってみてください。
「キャラバンサライ包」(東中野・西アジア料理)
https://tabelog.com/tokyo/A1319/A131901/13006879/