【閉店しています】
店主は現在、駒忠新大久保店で働いているとのことです。
さして期待もせず注文した、510円の「牛ホルモンのみそイタメ」。
クリアファイルに綴じられたメニューには入っておらず、壁に貼られたビール会社のポスターの上に小さく手書きされているだけ。
なぜポスターにメニューを書くのか。しかも小さな字でちょこちょこと。
その投げやりな雰囲気は気になりましたが、ビールのあてに何かほしかったので頼んでしまいました。
そしたら!
うまい。量も多い。
ホルモンはぷりぷりして臭みもなく、たっぷりの野菜とともにコクのある味噌でまとめられています。こりゃあびっくりです。
この店は都営住宅の1階に陣取る古い中国料理の店。ニッポンの中華です。
周囲の店はやってるんだかやってないんだかわからない店がほとんどで、よくある都営住宅のうら寂しい光景。正直あまり期待していませんでした。
ただ、夜8時すぎにふと通りかかると中からにぎやかな声が。
え、この時間に客がいるんだ。
その声に吸い寄せられるように入ると入口ではくまのプーさんの大きなぬいぐるみがお出迎え。そのまま曲がって店内に入っていくと若い女性のふたり組と、座敷でのグループの宴会とまずまずの客入り。
店内は意外に広く、4〜6人用のテーブルが4つに、座敷には円卓が3つ。
ただ、滅びの美学を感じさせる光景できれいとはお世辞にも言えません。
まずは生ビールとつまみ。
それで「牛ホルモンのみそイタメ」に感激したあと、メインは何にするか。
ネットでこの店の名物とされている「骨付ご飯」にしてみました。
いったいどんな味の料理が出てくるのやら…。
待ち時間、聞く気はなしに聞いていると、目の前の若い女性ふたりは看護師のよう。病棟の出来事を面白おかしくキャピキャピ語り合っています。
一方、座敷のグループの方は囲いの向こうなので姿もよく見えず、声もよく聞き取れなかったのですがやはり医療スタッフのようです。
隣は国立国際医療研究センター。
昔の国立東京第一病院で、コロナ対応の最前線の病院です。私たちの健康を守ってくれている人々はこういう店で疲れを癒やし英気を養っているとは。
さて「骨付ご飯」の登場です。
ご飯が見えないほどにぶっかけられた肉野菜炒め。餡でたっぷりととろみがつけられています。
ぱっと見、中華丼。
ただ肉が多い。麻雀牌くらいの大きさの肉がところ狭しと並んでいます。ただ、骨はついていません。周囲の表面は褐色でどうやらパーコー(排骨)のようです。実際に食べてみると普通の中華丼とは違い、八角の香りがします。
白菜をはじめとする野菜も多く、キクラゲも惜しみなく。
醤油ベースの餡の味付けもよく、けっこうおいしくて、ガツガツと食べてしまいました。
正直、外観からも店内の雰囲気からも期待してなかっただけに、びっくりしました。
さて、冷たい秋雨が降りしきるなか、今度はランチで訪れてみました。
今回はまったくのノーアイディア。メニューをめくり、悩みます。
目についたのは「あわびの冷菜」。
ほかにも「あわびのカキソース煮」に「あわびの醤油煮」も。なんとすべて時価。
都営住宅の1階のこの古びた店で、果たして鮑を注文する客がいるのでしょうか。そして主人はいつ来るかわからない注文のために鮑を在庫しているのでしょうか。謎です。
で、注文したのが「五目やきそば」と「餃子」。
10分ほど待って先に出てきたのはやきそばのほうでした。
見た目、けっこう豪華です。
野菜はそれほどの違いは認められないものの、小さくはないエビと貝柱がけっこう入っています。そこらの本格中国料理店のよりも豪華かも。
餡もこっちは塩っぽく、正統派のもの。熱々でおいしい。
ところが…なんと麺が冷めていました。
作り置きなのでしょう。熱々の餡をかけて一緒に食べれば、たしかに冷えてるのは気にならないしむしろ適度な温度になるという考え方もあるでしょう。
ただ私としてはレンジでチンでいいので熱々の麺をすすりたかった。
味はよかっただけにそこだけが唯一、残念でした。
そして焼きそばを半分食べたころにやってきた餃子。
うわ、でかっ。と思わず声に出そうになるくらいの大きさでした。
見るからにふわふわで、かじりついてみると餡も柔らか。
にんにくが効いていておいしい。ビールに合いそう。
焼きそばも餃子も標準よりもひと回り大きく多かったので、満腹になってしまいました。
しかしまあ、こんな場所に素晴らしいコストパフォーマンスの店があったとは。
世が世なら「キタナシュラン」選出間違いなし。知られざる“街中華”の名店としてもっと有名になってもいい気がします。
誰か一緒に、この店のあわび料理を堪能してみませんか。果敢なご応募をお待ちしています。
「豊華飯店」(若松河田・中国料理)
https://tabelog.com/tokyo/A1305/A130504/13092945/