「ベトラーヴ」という、日本人にはとっても覚えにくい店の名は、甜菜(テンサイ)を意味するフランス語。昔、「砂糖大根」として習ったあれで、ロシア料理のボルシチに欠かせないテーブルビートも仲間です。
その名前の覚えにくさからでしょうか、この店には「ビストロジロー」というサブタイトルもついています。
そのビストロの名にたがわぬ圧倒的な量と、日本人向けに無理に合わせていない味は、1,000円前後のランチでもじゅうぶんに堪能できます。
その代表は「メキシコ牛のハラミステーキ」。
甘酸っぱいソースをからめた豆類の上に鎮座するハラミは手を広げたくらいの大きさ。厚みは2cm近くあって見るものを圧倒します。
もちろん食べごたえも満点。これにスープ、簡単なサラダがついて1,200円とはなかなかないコストパフォーマンスぶりです。
場所は、代々木公園の西を走る井の頭通りから一本入った細い路地に面したマンションの1階。
この路地は昔、宇田川という川が流れていた場所に覆いをして暗渠化したもので、現在も地下には川が流れています。文部省唱歌「春の小川」で「さらさらいくよ」と歌われたのがこのあたり、という話がありますが、この場所を見てその光景に思いをはせるのはもはや不可能なほど変わり果ててしまいました。
ランチは中心価格帯が1,050円。なかにはメカジキなど魚や、サラダをメインに据えたメニューもありますがやはり量で圧倒してくるのは肉。
「香川産もち豚のロースト」は、主人の出身地である香川県の食材を活かしたもの。
さやいんげんとともにオーブンで焼き上げられた豚が、その脂とともにつけあわせの豆類の上にジュッと乗せられています。
ハラミに比べ、ソースがないぶん少しだけ淡泊。しかしそのボリュームはやはりなかなかのものがあります。
かつて在ルーマニア日本大使館の料理人として滞在した縁から、ルーマニアに対する思いもまたあふれるこの店。かつては渋谷の中心部、246から北に入った路地に店を開いたころに気づいてはいましたが、いつか入ろうと思っているうちにこちらに移転していました。
ちょっとやそっとでは見つけられない、路地裏の隠れ家的な場所として、昼も夜も大切にしていきたい、いい店です。
ベトラーブ(代々木公園・ビストロ)
https://tabelog.com/tokyo/A1318/A131810/13122245/