目から鱗が落ちた刺身でした。
写真は、鰆(さわら)の刺身をバーナーでちょっとあぶり、ウコン塩をふったもの。その濃厚な味わいには、ほんとうに驚きました。
パサパサとした食感のイメージがある鰆がここまでしっとりと、かつ少しねっとりとした食感を持ち、しかも濃厚な味わいを持つものだとは。これを食べるだけでも、この店に行く価値はあると思います。
“沖縄の刺身はまずい。”
“温かい海で育った魚の身はゆるく刺身に向かない。”
よく、こうしたことをしたり顔で吹聴する連中がいますが、そう言う連中に限って養殖でぶよぶよの鯛やブリの刺身なんかを普段食べているのですから、自称グルメという連中は信用できないのです。
ミーバイ(ハタ)、イラブチャー(ブダイ)、沖縄スギなど、刺身でじゅうぶんおいしい魚は沖縄にもたくさんいます。そして、おいしい刺身や寿司を出す店は、探せばちゃんとあるのです。
この店の主人は南大東島出身。
南大東島とは、沖縄本島から東に360km、都道府県としては沖縄県に所属しますが、そもそもの島の歴史は八丈島の移民の上陸から始まっています。そのため、この島には秋分の日に神輿を担ぐ祭りがあるなど、本土に近い文化が根強く残っています。
とくに色濃く残っているのが寿司文化、というわけでこの店(南大東島に同名の姉妹店がある)の刺身と寿司はかなりのレベル。
とくに特徴あるのがヅケの寿司です。
鰆をヅケにして握ったものをこの店では「大東寿司」という名で出しているのですが、あらかじめ教えられなければやはり鰆だとは気づかないほど濃厚な味でしっとり。
単品での提供のほか、「琉球料理コース」などにもちょっと付いてきますからこちらで試してみるのもいいかもしれません。
また、近海物のマグロもさすがに鮮度が高く、しかも赤身中心での提供のため、気候にふさわしくあっさり。トロ嫌い、というより近年のトロ信仰の異常さに辟易している私にとっては、非常に好ましく思えます。
琉球料理コースは、じーまみー豆腐(ピーナッツ豆腐)にはじまり、ドゥルワカシー(田芋と芋茎の炒め煮)やミミガー(豚の耳皮)、ラフテー(豚の角煮)、刺身、大東寿司、ゴーヤーチャンプルー、いもくず天など、沖縄料理が少しずつですがひと通り網羅されたもの。全体の味もよく、沖縄滞在の最初のほうに訪れて郷土料理を試したい、というひとには非常にいいコースでしょう。
また、沖縄の料理はもうある程度食べた、なによりもおいしい魚が食べたいというひとの方にもこの店は向いているかもしれません。
なお、「大東寿司」は最近では那覇空港での「空弁」として販売されています。
これはJALの子会社を通じて製法が空弁用にライセンス供与されたもので、この店に行くことがなくても「大東寿司」が食べられるようになっています。もし空港で見かけたら買ってみてください。
国際通りのような観光地や、松山といった繁華街から少し離れた場所で、路地の奥にひっそりたたずむ小さな店ですが、沖縄で本当においしい魚を食べたくなったらぜひ行ってみてください。
人懐っこいご主人との話もいい肴になるでしょう。
「喜作」(那覇・沖縄郷土料理)
https://tabelog.com/okinawa/A4701/A470101/47000804/