「とん太」「成蔵」と並び、“知られざるとんかつのメッカ” 高田馬場を牽引してきた「とん久」。
ここの極上ロースは脂身が甘く、うま味が凝縮されていて絶品です。林SPF豚という千葉の農家のグループが生産する豚肉のうま味を存分に引き出しています。
知らなかったのですが、豚という生き物は母豚の産道を通って出てくる際に様々な病原菌に感染してしまうのが宿命。その病気があるために抗生物質の投与が必要になってしまっているとのこと。
これを解決するために母豚を帝王切開し、感染しない子豚を取り出したのがSPF豚で、これの子孫を増やすことでSPF豚は生産されています。
よく「無菌豚」と呼ばれるので無菌室で育てられてると勘違いされ、さらには“無菌だから火を通さなくても食べられる”などと言う人もいますがとんでもないこと。SPF豚でもちゃんと火を通さないとダメなんだそうです。
しかし生まれつき病原菌を持たないことで子豚は健康に育つため、肉質もいいとのこと。それが脂身のうま味につながっているそうです。
さて、ここ「とん久」のパン粉は細かめ。パン粉が細かいとサクサク感が少なくなりがちですが、ここの主人は研究の末、細かいパン粉でサクサク感を出すことに成功。
パン粉が細かいことで、吸い込む油の量が少なく、これが重さを感じないとんかつの秘訣となっています。
実際、「成蔵」のパン粉は非常に大きいので噛んだときの軽さ、サクサク感はダントツなのですが、低温の油で長時間揚げていることもあり、食後の「重さ」は半端ではありません。まさに若者向きです。
しかし「とん久」のはもたれないため高齢者でもペロッといけてしまいます。見た目も含めて、正統派のとんかつを極めたものがこの店のとんかつと言えるでしょう。
あと、特筆すべきはご飯のおいしさ。硬めに炊かれたコシヒカリはとんかつとの相性ぴったり。キャベツと一緒についついお代わりしてしまいます。
キャベツ用のドレッシングも自家製のトマト味がとてもおいしく、お新香もいいもの。どこにも抜かりがない計算されつくした総合力の勝利、というべき料理でしょう。
そうそう、キャベツの横に鎮座するケチャップまみれのスパゲッティもまたいい味出しています。まさに「古き良きとんかつ」を極めた姿にふさわしい。
極上ロースにはポン酢おろしにトリュフ塩もつくサービスぶり。ほかの2店に比べ低い1,950円という価格水準もこの味ならむしろ安いと感じるほど。
冬限定(10月中旬から2月下旬)のカキフライもまた大振りでとてもおいしくて、個人的に楽しみ。
またランチのサービスメニュー「ロースかつ定食」(1,150円)もまたお手頃ながらきちっとおいしい。
こういう、安いメニューでも手抜きなく、またサービスにも分け隔てないところが、この店が愛される理由のような気がします。
さらにランチだけの「メンチかつ定食」(1,050円)も量がしっかりとあって真面目です。
高田馬場の駅前、ドンキが入るビルの地下という目立たない場所ながら、きらりと光るとんかつを提供し続ける知る人ぞ知る名店。
最近になってここも行列ができるようになりましたが、まだまだ短い。
ランチは1,050円からありますので、普段のお昼にぜひ行ってみてください。
「とん久」(高田馬場・とんかつ)
https://s.tabelog.com/tokyo/A1305/A130503/13000116/