「福岡で “がんす” って珍しいですね。」
そう話しかけたら、この店をひとりで切り盛りする女主人が嬉しそうに話し始めました。
「私、広島にずっといたんですが、“がんす娘” といまもよく話すんですよ。」
“がんす” とは、魚肉を練って衣をつけて揚げたもの。三宅水産という呉の水産会社の製品で、広島ではどこでも売っているローカルフードです。
この会社の娘が “がんす娘” を名乗ってスーパーなどで販促しており、地元テレビ局でときどき取材される有名人。確か女子大生のときから始めていまもやってるそうですからもう20年。息の長い “娘” です。
ただ、“がんす” によく似た製品は九州にもあり、なかでも馬郡蒲鉾の “ミンチ天” がおいしいので九州で “がんす” を見かけることはまずありません。
この店は三宅水産の本社からわざわざ直接取り寄せていて、電話注文の際に “がんす娘” と話すのだとか。
その “がんす” 1枚を加熱して、細かく切って盛りつけて550円、というのはちょっと…とは思いますが、小口の宅配料金込みなら仕方ないのでしょう。
この店があるのは、福岡天神から南に2kmほどの清川。個人経営の小さな飲食店がひしめくなかなか素敵なエリアです。
店名「あきちゃん焼き」の通り、ここは広島風お好み焼きの店。
店の奥には大きな鉄板が鎮座し、カウンター席が囲む形。ほかに4人テーブルや小上がりがいくつもあって意外に広い。
注文は基本的にセルフで、何種類か用意された突き出しとビールは自分で冷蔵ケースから取り出します。料理も口頭で注文した上で伝票は自分で記入。ひとりでやっていくためのシステムです。
2回訪れて頼んだなかで面白かったのは店名を冠した「あきちゃん焼き」。一見普通の広島風お好み焼きなのですが中に入っているのは納豆。
中華そばを鉄板で炒めたあとによく混ぜた納豆をどろー。
あとは普通にクレープ状の生地と卵の薄焼きに挟んで出来上がりです。
納豆は加熱すると匂いが倍加するので嫌いな人には逃げ出したくなる代物でしょうが、食べてみるとうま味が重なりおいしい。しょっちゅう食べたいというものではないですが、食べる価値はあると思います。
普通の広島風お好み焼きももちろんありますがちょっと小さめで1,000円。かつて広島でよく食べた身としてはちょっと考えてしまいます。
そのほか「牛肉の自家製たれ焼き」はニュージーランドの牧草牛にこだわり、ヒレとハラミを使ったもの。国産牛とは歯ごたえや風味が違って興味深い。
また「素ヤキソバ」(小480円)もユニーク。鳥取に「素ラーメン」があるのは「孤独のグルメ」で有名になりましたが素ヤキソバとはいかなるものか。
頼んでみると、ソースを絡めただけのものでした。そりゃあ確かに「素」だろうけどさぁ…。
全般に値段の割に料理の量が少なめで、気軽にとはいかない感じもありますが女主人と広島談義に花を咲かせるには
いい感じの店です。
「てっぱん あきちゃん焼き」(福岡平尾・広島風お好み焼き)
https://tabelog.com/fukuoka/A4001/A400104/40059369/