この店では安い方のメニューなのに、そのサービスぶりには目を見張りました。
「盛り合わせ定食」(1,020円)。
ヒレカツとエビフライとキス。
とんかつ屋でキスというのは初めて見たかも。しかしサクッとした歯触りとふわっとした身の柔らかさは天ぷらといい勝負ができるほど。なかなかのおいしさ。さすが老舗です。
この店があるのは、大久保通り。すっかりコリアタウンと化したこの一帯も、つい25年前まではそうではありませんでした。
以前はコリアタウンといえば東上野と赤坂。このふたつが戦前からの流れをくむ街だったのに対し、新大久保一帯は近年の移住者によって作られた街。
歌舞伎町に隣接してるため、もともと治安が良かったわけではないようですが、その前は普通の店が並ぶ地味な街だったことを覚えています。
いまや新大久保駅周辺は日本人の店が駆逐されてしまった感がありますが、大久保通りを東に行くにつれ、ぽつぽつと昔ながらの商いを続ける店が残っています。
同じ並びの「鳥一」とともに、ずっと気になっていたこの店。ようやく入ることができました。
店内は、和のしつらえの落ち着いた雰囲気。迎えてくれるのはご高齢の女性ですが、厨房は若い男性のよう。息子さんかな?
ロースカツ(並)定食が1,150円と、安くないけど高くもない微妙な価格帯。
目が釘付けになったのは「長崎とんかつ」(980円)。初めて見ました。
女性に尋ねると「メンチカツをウチではそう呼ぶんですよ。」と。
じゃあなぜ長崎と呼ぶんですか?と聞くとしばし絶句。「…さあねぇ。」とのお答えでした。
ま、歴史ある店にはよくあるということで。
さて、「盛り合わせ定食」。
困ったのはエビフライにタルタルソースがついてないこと。
卓上にはとんかつソースにウスターソースに醤油に塩。どれで食べろと言うのか…。悩みに悩んで塩に。フツーの食卓塩でわざわざ炒った米が入ってるところが懐かしい。
おそるおそるエビフライにかけて食べてみましたが、エビそのものの味がよく感じられてなかなかいい。エビ自体も細くなく、衣の厚さでごまかすこともなく、良心的なものでした。
そしてヒレカツ。小さくない。
これ1枚で普通にひれかつ定食になりそうなほど。私自身、脂身があるロースの方が好きではありますが、これはこれでおいしく食べられました。
正直、1,150円のロースに対しての1,050円なのであまり期待してなかったのですが、量といい質といいさらに雰囲気といいとても満足いくもの。
味噌汁も出汁が効きすぎてるくらいで漬け物も自家製。無理をせずおいしいものをたっぷり提供してくれています。
以前から前を通るたびに妙に惹かれてたのはこういうことだったのか…。
コリアタウンの喧騒のはずれでいい店を見つけました。
ぜひみなさんも新大久保か東新宿に行くことがあったら寄ってみてください。
おすすめです。
「かつ味」(東新宿・とんかつ)
https://tabelog.com/tokyo/A1304/A130404/13050592/