こうして写真で見るとそうでもないのですが、店で目の前にドンと置かれると「おぉっ」と声を上げてしまうほど”白い”のです。
この店の名物は「白カレー」。
ターメリック(うこん)の使用量を減らし、クリームソースなどで白さを強調してこの色にしているのでしょうか。確かに私たちが普段目にするカレーとは一線を画す、ちょっと厚化粧気味の”美白”のカレーです。
味もやっぱりまろやか。しかし喉の奥に来るような、ぴりりとした鋭い刺激が隠れています。カレーシチューというには粘度が高すぎることもあり、やっぱりカレーと呼ぶしかない料理になっています。いや、「白カレー」というひとつの立派な料理として評価すべきものなのでしょう。
具はほとんど原型をとどめておらず、そぼろ状の肉が確認できる程度。最初はカツカレーで頼んでみたのですが、カツは厚めの生姜焼きといった感じの厚さ。もしカツがなかったら飽きずに食べられただろうかとちょっと心配になりました。
そして後日注文してみたのが「ゆらぎ白カレー」。
これは、簡単に言ってみれば「煮カツカレー」。
カレーにカツと卵を入れチーズをかけて焼いたもので、カツ丼のトッピング部分をそのままカレーに置き換えればイメージできるでしょうか。
カリッとした食感になったカツがおいしく、またとろりとなった卵をつぶして混ぜながら食べることで味の変化
も楽しめますから飽きることはありません。
せっかく白カレーという珍しい料理を食べるのならこちらのほうがいいでしょう。
場所は高田馬場の北側の神田川沿い。
川に面して居酒屋やバー、つけ麺屋など飲食店がぽつぽつと並ぶなかの一軒。
入居する建物自体は道路に面しているものの、入口は奥まっていて入るにはちょっと勇気がいります。
しかしいざ入ってみると内装はあっけらかんと簡素で全体に合板チック。12人ほどのL字のカウンターが大きな厨房を囲んでいます。厨房だけで優に10畳はあり、正直、カレーだけの店でなぜこんな大きな厨房が必要なのかと思うほどです。
そうそう、この店での最大の驚きは、最初に食券を買って席に着くと、スプーンがコップに刺さった状態で出てくること。
そう、かつてこんな光景がありました。
昭和50年前後にスリップしたかのような、軽い眩暈を伴うデジャヴ体験です。
当時”スプーンにご飯がくっつかないようにするため”というもっともらしい説明がなされていましたが、スプーンは金属で水を吸いませんから意味はなし。たぶん誰も説明できないのにやっていたのでしょう。
この店の場合は、コップが空の状態にスプーンが突き刺さって出てきますが、ほかにスプーンの置き場所はないため、客は自分で水を注がざるを得ず、デジャヴ体験を味わうことに。
白カレーもおすすめですが、”コップにスプーン”といういまどきなかなかない体験ができる場としても貴重であり、おすすめできる店と言えるでしょう。
「1/f ゆらぎ」(高田馬場・カレー)
https://tabelog.com/tokyo/A1305/A130503/13124257/