なんとも素敵な空気が流れる小さな店です。
客は名前で呼ばれ、馴染みの客同士が語り合う。
こんな光景がランチでも繰り広げられる店を、私は渋谷ではほかに知りません。
神泉の駅から北に歩いて3分ほど。
マンションの半地下に3軒が並ぶうちの1軒。
看板に「定食サトウ」と書かれているのですが、夜はさすがに居酒屋というか酒がメインの和食の店になるのだろうと思っていました。
ところが夜も、定食だけ。
昼も夜も、「サーモンのつけ焼」などの定番を中心に日々入れ替わる形で6~7の定食を用意しており、それぞれが1,000円前後。これにポテトサラダやおひたしなどの単品が2~6品ほど用意されています。
昼はともかく、夜もお手頃な値段で定食を用意する店は渋谷ではとても貴重な存在。近くにひとりで住んでいたら間違いなく通い詰めることでしょう。
うれしいのは、定食に必ずついてくる7品目の惣菜。
玉子焼きやきんぴら、煮豆といった常備菜がほんのちょっとずつ盛られ、小さなお盆に乗って出てきます。
いまはコンビニでも惣菜が普通に売ってはいますが、こうした”ちょっとずついろいろ”というのは、うれしくなってしまいます。
また、メインに共通するのは、しっかりひと手間をかけていること。
魚も肉も、ただ単に塩で焼いたりするのではなく、醤油や酒粕などに漬け込むことで、よりご飯に合うおかずとして仕立て上げられています。
また、ひと手間かけることは同時に保存性を高めることでもあり、店にとっては捨てる無駄を省くことになりますから、6~7定食に絞り込むことと相まって効率的な経営をも可能にしているようです。
なお、前もって予約をすれば「夜のおまかせコース」があるようですが、これも刺身とメインの肉か魚料理が増えるだけで基本的には定食と同じスタイル。
酒もこだわりの日本酒をはじめ各種置いてあり、ご飯が焼きおにぎりにもできるということですので、しっかりと食べながらこじんまりと楽しむ宴会にも使えそうです。
5人が座れるカウンターと、奥に8人も座れば一杯の掘りごたつ形式の小上がりという小さな店ですが、いい常連客に恵まれているようで、店の雰囲気はゆったり。
もっと職場か家に近ければ、間違いなく通い詰めるであろうこの店。
常連客に軽い嫉妬を覚えながらも、夜のおまかせコースでささやかな宴を開く日を夢見ずにはいられません。
ちゃんとしたご飯が食べたければ、一度は行くべきお勧めの店です。
「定食サトウ」(渋谷/神泉・定食)
https://tabelog.com/tokyo/A1303/A130301/13094042/