「鶏のスープ」というより「鶏皮のスープ」でしょうか。
去年(2011年)11月に、高田馬場の路地裏にできたばかりの店。
店頭の掲げられたメニューが「鶏そば」というので、かつて渋谷にあった「チャーリーハウス」のような琥珀色の澄んだスープのラーメンかと思いきや、クリーム色のとろんとした博多名物水炊きのようなスープ。いかにもコラーゲンたっぷりです。
正直、「鶏そば」を期待した身としてはちょっと拍子抜けしてしまいましたが、食べてみると滋味深く、なかなかのもの。麺は細く、柔らかな味のスープをよくからめとって来てくれる感じです。
通常なら豚肉を煮たチャーシューが占める座も鶏肉。
鶏肉を蒸して焼き目をつけたものが4枚ほど乗り、そのうち1枚はマトンの集成肉のように丸めたもの。たしかにこの水炊きのような柔らかな味のスープではこれ以外の”肉”はない気がします。
そのほか、メンマも柔らかくやさしい味。「鶏そば」はすべてスープを基準にまとめられているというのがよくわかります。
最近の、まるで鰹節をかじっているかのような魚系やこってりギトギトのトンコツ系、しょっぱさにインパクトを求める牛骨醤油系とは一線を画した、やさしい味の新しいジャンルとして今後さらに台頭しそうな味です。
一方、夜限定の「まぜそば」も基本は柔らかいものの醤油の味が多少前面に出てきたもの。
少し太めの麺の上に乗るのは、鶏そぼろと味噌を合わせた肉味噌と揚げたエシャレット、辣油、それにカイワレ大根など。全体に甘くまとめられている中で、とくに甘く感じられるのが辣油。直接口に含んでみても辛さよりも甘さが先に立つほどで、いま流行の「食べる辣油」のようですが、個人的にはどうもいただけません。
全体が甘めにまとめられているからこそ、アクセントとしての辛さはインパクトがあるべきだと思うのですが。
なお、この「まぜそば」は最後に少し麺を残して「鶏蛋湯」を追加注文するのが店のオススメ。
食券と一緒に丼を渡すと、鶏スープと卵が投入され、残った醤油味のたれとともに飲み干すというもの。
まあ100円という価格が微妙ですし、ここまでして食べなきゃいかんのか、と自問自答する部分はあるのですが、僧侶の食事のように最後までありがたくいただく、という点では「あり」でしょうか。
なお、サイドメニューにある「鶏そぼろごはん」は秀逸。
薄味で上品にまとめられたそぼろごはんは、その昔母が作ってくれた弁当のようでうれしく、麺とは別に大きな満足感を与えてくれます。
開店してまだ2か月の店ですが、新しいジャンルの麺としてこれから広がっていきそうな予感がします。
個人的にはもう少し甘くなければとは思いますが、一度足を運ぶ価値はあるのではないでしょうか。
「三歩一」(高田馬場・ラーメン)
https://tabelog.com/tokyo/A1305/A130503/13134126/