「コストパフォーマンス」という言葉を最初にグルメの世界に持ち込んだのは実は、私です。
もともとコストパフォーマンスとはオーディオマニアの世界で使われてた言葉。
オーディオ評論の神様と言われた長岡鉄男氏が機器の批評に使ってた【和製英語】なのです。
オーディオの趣味が下火になって半ば死語と化していたこの言葉を、私が2000年ごろに開設した「渋谷とっておき!!」というサイトで使いはじめたところあっという間に広まり、いまではすっかり誰もが知ってるグルメ用語となってしまいました。
さて、そのコスパの高さで一世を風靡した「俺のフレンチ」などの「俺の」シリーズ。
その味と原価の高さからは信じられない安さ、との評判でしたが、私自身は立ち食いということでなにか敬遠していました。(決して「一緒に行く相手がいないから」という理由ではありません)
でもいつの間にかみんな着席スタイルになってたんですね。
きのう「俺のフレンチ」に行ってみようということになり、当日午前中から探したのですが、さすがクリスマス直前の日曜だけあってほとんどの店が満席。夕方、ポロっと空きが出た瞬間に予約できたのが銀座の端っこのコリドー街店でした。
まず最初に頼んだのは「生ウニのエスプーマオマール海老のジュレとキャビア」。
例えて言うならシェービングクリームのような感触の泡の下に、煮こごりのようなジュレが隠れていて、上にはウニとキャビアが乗っています。
スプーンで切り分けるようにすくって口にいれるとウニの香りが口いっぱいに広がりエビのうま味がついてきます。そしてキャビアのほのかな生臭さと塩味がトドメを刺す感じ。この贅沢で複雑な味が1,380円は驚きの安さです。
牛ヒレ肉ステーキの上にフォアグラが乗った「ロッシーニ」もウソみたいな1,980円。
ステーキを切ってみると中は赤く、この柔らかさは低温調理だからでしょう。フォアグラのとろっとした食感に濃い味のソースがよく合っています。
ただ、オプションのトリュフのトッピングは風味がなく余計だったかも。まあ300円ですから仕方ありませんが。
「わたり蟹のトマトリゾット」(780円)も蟹のうま味が濃厚で食べごたえあり。
ただ、上に乗った蟹が干からびたようにカラカラだったので、かじっていいのか一瞬躊躇しました。(よくあるパセリ伝説のように)
ほかにも「鰤のカルパッチョ」や「淡路玉ねぎのグラタン」「鶏白レバーのパテ」「俺んちのシーザーサラダ」などどれもお得感満載のおいしさだったのですが、いちばん驚いたのはデザート。
「マスカルポーネアイスのアフォガード」は380円。値段からすると丸くすくった1個か2個と思っていたのですが、出てきたのはゴロゴロと積み重ねられたアイスの岩山。
高さ20cm近くはあるこの“富士塚”にエスプレッソがかけられ提供されるのですが、食べても食べても減りません。どうしてこれが380円で出せるのか不思議でした。
とにかく一品一品が安くておいしく、コストパフォーマンスが非常に高いのは事実ですが、今回はちょっと調子に乗って頼みすぎ、けっこうな金額となってしまいました。それが唯一の後悔でしょうか。
店内は狭く、カウンターは高く、かつて立ち食いだったんだろうなという感じ。
内装もスケルトンを黒く塗っただけで質素。雰囲気だけで言うなら「食堂」といった感じです。
でも、気軽に本格的なフランス料理に親しめ、一般の人々の味の世界を広げたという点では「俺の」シリーズの果たした役割は大きかったとあらためて感じました。
いまや「俺のフレンチ」「俺のイタリアン」だけでなく「俺の焼肉」「俺のやきとり」「俺の割烹」「俺のうなぎ」さらには、おでんや蕎麦にまで広がる「俺の」シリーズ。
ネットで簡単に予約できますので、親しい人とのちょっとした会食にはいいと思います。
「俺のフレンチ」(銀座・フランス料理)
https://tabelog.com/tokyo/A1301/A130103/13146999/