小笠原では意外なことにタコがけっこうとれます。
島ではアナダコ、標準和名ワモンダコというタコが。
その名の通り、島では岩場の穴に隠れているのを、
タコカギで引っかけたりして捕るのが主な捕りかた。
そしてこのタコ捕りにはまってしまう観光客もいて、実際、タコ捕りだけのために小笠原に毎年のように来ているという人にも会ったことがあります。
真っ青な海と白い砂浜、そして珊瑚輝くこの島に、なぜ4万円もの船賃を使ってタコ捕りだけのために来るのか理解不能ではありますが、それほどタコ捕りは面白く、自分で捕ったタコはおいしいのでしょう。
しかしこのタコ、島内ではなかなかお目にかかることができません。どうやらメカジキやイソマグロなどに比べて儲けが少ないため、ほとんど漁業の対象とはなっていないようで、島民が自分で捕るか、捕ったタコをおすそ分けでもらうかして島内で流通しているようす。観光客の目に触れることはあまりありません。
その、島で捕れたタコを定番メニューとして味わえる数少ない機会が、この店の「タコ炒めライス」です。
朝鮮料理独特のコチュジャンをベースにした、辛さと少しの甘さのたれでほかの野菜と炒められたタコは身が引き締まっていてこりこり。なかなかうま味もありいわゆる「カラウマ」になっています。
このタコ炒めのことを「タコポッカ」と言い、これをご飯に乗せて「タコ炒めライス」の完成。白菜キムチと白いスープがついて1,000円はちょっと高いかも、とは思いますが、島で捕れたタコが味わえるのですからまあこんなもんだと思うことにしましょう。
この店があるのは島の玄関口・二見港の目の前。
ははじま丸の発着場の向かいにぽつんとあります。
入りやすい雰囲気とは言えないのですが、実際に入ってみるとそこはけっこう広い空間。板間に焼肉用テーブルがずらりと並べられています。その奥には居酒屋のようなカウンターと2つの4人がけテーブル。
以前居酒屋だったのを居抜きで入居し、プレハブを継ぎ足して焼肉コーナーを作った、そんな雰囲気の構造です。
朝鮮料理は一通りあるようで、ランチではほかに「プルコギライス」や「石焼ビビンパ」、「冷麺」など13種類から選べ、夜は焼肉を中心にカムジャタンやブデチゲなどの鍋ものもあり、宴会もできるようです。
そのなかのひとつに「牛穴タコ鍋」というものがあり、「タコ炒めライス」同様に惹かれるものがありました。
まあ、わざわざ観光で小笠原まで来て、なんで朝鮮料理を食べなければならないのかというのは正直なところでしょう。しかし「タコ炒めライス」ならば島ならではのタコを味わうことができます。
さらにもし長期滞在なら、毎日魚ばかりというわけにもいかないでしょうし、たまには刺激的な辛さというのも恋しくなるときがあるはず。そのときはこの店のことを頭の片隅から引っ張りだしてみてください。
シチュエーションは限定されるかもしれませんが、島の産物を味わえる店だと考えればかなりおすすめです。
「アリラン」(小笠原諸島父島・朝鮮料理)
https://tabelog.com/tokyo/A1331/A133102/13050363/