非常に珍しいチベットの鍋「ギャコック」です。
豚骨ベースのスープに、羊肉、豚肉の揚げ物、鶏団子、厚揚げなど具だくさん。
やさしい味ながらけっこう量もあり、3~4人でつついて満腹になります。
チベット語で「ギャ」は中国、「コック」は鍋を意味しますから、訳すと「中国鍋」。チベットが古来中国と交流する過程で、中国風のものを取り入れて出来上がった料理なのでしょう。
1日2組だけの限定で、2日前までの予約が必要。オフ会など食に興味のある仲間との宴会にぴったりです。
都営新宿線の曙橋駅を降りて東に一直線。巨大な防衛省の向かいにあるここ「タシデレ」はチベット料理の店。まだ3年経ってない新しいお店です。
チベットはヒマラヤ山脈の北、標高3,000m以上の高原にかつて存在した独立国。法王ダライラマを中心とした宗教国家でした。この国で生まれたチベット仏教は非常にストイックで論理性もあり、歴代の中国王朝やモンゴル帝国にも大きな影響を及ぼしてきました。
しかし、清の時代から軍閥によって周辺が徐々に削り取られ、さらに第二次世界大戦後に中華人民共和国が首都ラサを制圧。独立国の地位を失い、中華人民共和国の一部に組み込まれます。ダライラマはヒマラヤ山脈を越えインドに亡命。ダラムサラという小さな町に亡命政府を樹立してチベット仏教とチベットの人々を守っています。
そのチベットの元僧侶ロサンさんが営むこの店は、都内唯一のチベット料理店。サイドにインド料理もあるものの、多くの本格的チベット料理がラインナップされています。
チベット料理の代表といえば「モモ」。ネパール経由で入ってきたため、日本ではネパール料理だと思っている人が多いですが、れっきとしたチベット発祥の料理。
チベットではヤクと呼ばれる毛の長い牛の肉を使いますが、日本では手に入りませんから、中身は普通の牛肉で作ります。
ちなみに、チベット仏教の僧侶は、動物では牛だけは食べることができます。これは、大きな生き物であればひとつの命でたくさんの命が養われるという考え方によるもの。なかなか合理的ですが、反面知り合いの元チベット僧侶は「辛子明太子は絶対に食べられない」のだとか。「明太子ひと腹に何万もの命があると思うと罪深すぎて食べられない」のだそうです。
さて、モモの作り方に戻りましょう。牛肉などを固めた餡を丸い皮で包み、回すようにして閉じていきます。頂点には小さな穴があることが多く、蒸して提供されます。小籠包とはまた違った、おいしい一品です。
ほかにも「テントゥク」という、野菜たっぷりのすいとんのような優しい味の料理があったり。
さらに「シャプタ」という肉と野菜の炒め物などもあります。
メニューに「辛くできます」と書いてあったので試しに、「現地の人が食べるくらいの辛さで」とお願いしたら、嫌というほど辛いのが出てきて食べるのに苦労しました。チベットの人々は基本的に唐辛子の辛さが大好きだそうで、みなさんは間違っても「現地の辛さで」などと頼まないようにしてください。
あと、本当の意味でのチベットの日常食といえば「ツァンパ」。
大麦を煎って挽いた粉(はったい粉)にバターとチャイなどを混ぜながらこねるもので、チベットではほぼ毎食これだけで生活しています。
この店でも「ツァンパセット」という形で飲み物と一緒に完成したものが提供されるのですが、私が注文したときは忙しかったらしく、こねる前の原料がそのまま出てきました。ちょうど自分でこねてみたかったのでチャレンジしてみると…。
なんかものすごく汚い色のものができあがりました。ちゃんと手を洗ったし、普段から清潔にしているつもりだけにちょっとショックでした。
しかし、味は現地で食べたものと同じ素朴な味で安心しましたが。
手つかずの川と山と草原。日本では見られなくなった素朴な暮らしはまだ、チベットの奥地では見ることができます。
悠久の時間と精神性の高い文化を、ぜひ一度感じてみてはいかがでしょう。
「タシデレ」(曙橋・チベット料理)
https://tabelog.com/tokyo/A1309/A130903/13183290/