上の写真。午後7時過ぎ。開店直後の店内の写真です。
この光景がわずか1時間15分後…。
午後8時15分の店内は、白くて厚いヴェールが包んでいます。ヴェールは客が七輪で焼くホルモンから立ちのぼる煙。狭い店内に充満し、出入口にいる客さえ見えなくなってしまいます。
座席にはあらかじめ大きなポリ袋が置かれ、客は上着を入れてしっかりと口を閉じます。でなければあとで牛脂と煙がこびりついたかのような上着を着て渋谷の街を歩くはめになってしまうからです。もちろん煙は、髪やシャツにも容赦なく匂いをまとわりつかせてくれるのですが。
しかし、そこまでの苦労をしてでもここのホルモンは食べる価値があると言えるでしょう。
とくにホルモン。
周囲の脂肪をまとったまま、ふわふわとした感触のホルモンは、口のなかに入れた瞬間にじゅわっとうま味がほとばしります。正直、これほどおいしいホルモンはそうそうあるものではありません。この店の人気の半分以上は、このホルモンが担っていると言っても過言ではないでしょう。
そのほか「ギアラ」(牛の第四胃)。
ハラミ。
上タン。
「ミノサンド」など、どれを食べてもおいしく、素材の新鮮さが伝わってきます。
またそれぞれの素材ごとに味が違うタレも絶妙。基本的に私は”塩派”なのですが、この店のタレならいろいろと試してみたい気になってしまいます。
さらに「サーロイン」も頼んでみました。注文する際、脂はどの程度が好みか、と聞かれたので連れが“中ぐらい”といい加減な返事をしてしまったのですが実際に出てきたものは見事なサシの入ったもの。たしかにいい肉でとてもおいしかったのですが、少々くどく感じられてしまいました。脂は少ないほうがいい気がします。
しかし、この店にはほんとうに久しぶりに来ました。
10年ほど前はまだ”知る人ぞ知る”といった程度の感じ。仕事帰りにふらっと立ち寄って飲むような、そんなことができる店でした。それがいつの間にか有名店となってしまい、いまや予約なしでは入れないようになってしまったために、私のような計画性のない人間は足が遠のいてしまったのです。
ただ、実際の記憶のなかではおいしい店だったという印象は残っていても、ここまで有名になるようなすごい店という印象が残っていません。その間、地道な努力を重ねて名声を高めていったのでしょう。
いまや渋谷だけでなく東京でも屈指のホルモンの店になったという評価は、正当なものだと思います。
いま、もし当日に予約なしですんなり入りたいと思うなら、方法はただひとつ。
開店時間の7時までに店に来て、店の前で七輪の準備をするスタッフに入れるかどうか尋ねるのです。もし幸運にもすべて予約で埋まっていなければ、そのまますんなりと入れてしまいます。でなければ1時間以上の待ちは覚悟しましょう。
店内に立ち込める煙はすさまじいものがありますが、その苦難を乗り越えてでもこの店のホルモンは一度食べる価値があります。
ぜひ一度どうぞ。
「ゆうじ」(渋谷・ホルモン焼き)
https://tabelog.com/tokyo/A1303/A130301/13001794/