選挙に落ちて、ヤケクソになったか。
たいていの人がそう思ったことでしょうし、
メディアからそう非難されるのも仕方ない気がします。
青天の霹靂だった千葉景子法務大臣による死刑執行。
法相である以上、刑法に最高刑として定められ、裁判所が
審理をつくして下した死刑という刑罰を執行するのは
法治国家として当然のこと。
個人の信条など入り込む余地はありません。義務です。
もし信条により死刑執行を拒むのなら、法相になっては
いけないのであり、法相になってから「死刑反対」を理由に
執行の署名をしないのなら、それはもはや税金泥棒のそしりを
免れません。
そういう意味では、千葉景子は法相としての役割を全うした、
とむしろ評価されるべきことでしょう。
しかし、です。
なぜいまの時期に執行に署名したのか。
しかもわざわざ東京拘置所での執行に立ち会ったのか。
理解できないのはこの部分です。
千葉景子は、今月11日の参議院議員選挙で落選しています。
25日に前回の任期が切れ、民間人として引き続き法務大臣を
続けることになったばかり。
落選議員がそのまま民間人として大臣を務めることに法的な
問題はありません。しかし、民意による審判で国会議員の職を
解かれた人間がそのまま国務大臣を続けていいのかという
倫理的な問題は残ります。
民主党の枝野幹事長によれば、千葉が死刑執行命令書に
署名したのは24日。25日までの参議院議員としての任期内
であり批判は当たらないとしていますが、落選が決まったのは
11日の選挙なのですから、まったく弁明になっていません。
彼女は選挙に落ちてから署名した。
それは厳然たる事実なのです。
ではなぜ、この時期に署名をしたのか。
その背景に、「死刑廃止議連」の存在があるような気がします。
死刑の廃止を目的に、1994年に発足したこの議員連盟には、
現在の会長は亀井静香、副会長に仙石由人が名を連ねるなど
リベラルを中心に現在の与党議員が多く名を連ねています。
千葉もまたこの死刑廃止議連の一員でした。
法相に就任した千葉には、これら議連の重鎮たちから
「執行するな」という有形無形のプレッシャーがあったことでしょう。
その一方で法務官僚からは法相の義務として署名を迫られ、
死刑囚が犯してきた罪の深さや遺族の苦しみや悲しみ、そして
裁判員裁判で今後死刑が下されるにあたっての影響などを
とうとうと説かれていたに違いありません。
千葉は、死刑廃止議連と法務官僚の間で板挟みになって
苦しんでいたのではないでしょうか。
まあそれも、「大臣」の名前欲しさに、その任務の重さも考えずに
尻尾を振って飛びついたことがそもそもの原因なのですから、
同情の余地などないのですが。
ですから、千葉が選挙に敗れ、議員でなくなったことは
同時に死刑廃止議連からのプレッシャーから解放されたと
いうことなのかもしれません。
死刑廃止議連にとっては、大きなダメージとなりました。
執行直後の記者会見で、千葉は法務省内に勉強会を開き、
死刑制度の存廃を含めたあり方を検討することを明らかに
しました。
しかし以前から千葉が唱えていたこの会について、省内では
「執行をしないまま議論を始めれば廃止もありうると取られ
かねない」と否定的な声が多かったといいます。
ここからは私の憶測ですが、
彼女はたぶん、死刑執行と引き換えにする形で、勉強会の
設置を法務官僚に認めさせたのではないでしょうか。
千葉にしてみれば、とにかく死刑廃止への議論の道筋はつけたと。
とはいえ、みずからの手で死刑執行に署名した人間が
これからいくら「死刑廃止」を叫んでみたところで、誰が
聞く耳を持つと言うのでしょうか。
今回の”事件”は、「政治主導」を掲げた民主党政権が、
またひとつ官僚の手に落ちた、というロジックで考えるべき
かもしれません。
この文章は「とっておき!!のねごと。」からのものです。
http://www.totteoki.jp/negoto/
コメント
私の憶測ですが、おそらく内閣筋からの要請でサインしたのだと思います。
今までは「官僚内閣制」という仕組みで行政が動いていたと思います。
これは、過去の方針・方策及び横に繋がる様々な法律・方策と整合性を
保ちつつ物事を押し進めて行くと言う、極めて複雑で煩雑で退屈な方法を
採用していたわけですが、この方法には優秀な官僚の手を借りなくては
いけなかった訳です。ただこの方法によって、国民が閉塞感を有するように
なったことは否めません。
民主党の言う「政治主導」とは、正にこう言った縦・横との整合性を取る
しがらみを断ち切ると言う点にあったと思います。
それに多くの国民が期待した訳ですね。
ただいざ政権を握らせてみたら、こいつらとてつもない素人集団で
しかも色んなしがらみを断ち切って生じる軋轢を背負い込む度胸も
無い事が判ってしまったというところでしょうか。
死刑廃止論結構ですが、その方針を実行すればどのような軋轢や
齟齬が生じるか判って居らず、判った時点で日和ちゃったのでしょう。
以前ここにも書き込みましたが、心配していた事が起きました。
ペルシャ湾の入り口で原油タンカーにミサイルが打ち込まれました。
一月前にこう言った可能性が判ってから、あわててアフリカ沖の
海賊対策の一環としてインド洋での給油活動を行う検討を始めて
いたようです。
政権を担うだけの「基礎体力不足」が明らかなようです。
まあ、秀さんの話も私の話も表裏一体のような気がしますけど。
でも、官房長官に死刑廃止議連の副会長・仙石由人がいますから、
内閣筋からの要請とは考えにくいんじゃないですか。
たしかに、参議院で千葉法相の問責決議案なんか可決されて
衆議院解散に追い込まれる事態はなんとしても避けたかった、
という論理は成り立ちますが…。
仙石さんの頭の中は政権維持で一杯ですよ。
死刑廃止議連云々なんて話は胸中に無いでしょう。
リベラルという旗印が欲しかったのが主で、
もともとそれだけの矜持があったとも思えません。
むしろ亀井さんのほうがよっぽどこの問題に
関しては思い入れが深いと思います。
今度の国会で議員落選した千葉氏の法務大臣適格性が
野党により厳しく問われることは間違いありません。
国民の85%が支持する死刑制度を無視する人物を
法務大臣に留めていることは、任命権者である
総理大臣の責任に繋がります。
そこで機先を制する為に死刑執行のサインをするよう
圧力を掛けたことは間違いありません。
これは千葉氏個人の資質云々という問題を
超えた所で、政局を睨んだ動きの一環と
捉えたほうが良いと思います。
仙石由人はバリバリの左ですから、
リベラルの旗印なんていまさら欲しくないでしょうに。
まあ素人談義は傍から見たら面白いものではないですから
この話はここで終わり。