あの「ゴリラの店」のゴリラが、捨てられてたよ…。
友人の娘さんがそう教えてくれたのは、
1か月ちょっと前だったでしょうか。
「ゴリラの店」とは、私たちがよく行く店の愛称。
高田馬場のビルの一部をスペインの一軒家風に仕立てた
洒落たイタリア風ダイニングバーで、ジャズのライブなども
行っています。
店内では、JBLの歴史的スピーカー「パラゴン」の上や
通りに面したテラス席に置かれたの籐椅子など、
あちこちにゴリラのぬいぐるみが置かれていることから、
私たちの間では「ゴリラの店」で通っていました。
その店の前を、その娘さんが友達とふたりで歩いていた
ときのこと。
廃品回収の軽トラックが店から走り去っていきました。
荷台には大きなゴリラが乗せられて。
実際に目撃したのは友達のほうだったと言いますが、
彼女はその事実に少なからぬショックを受けていました。
店のシンボルでもあり、多くの人に親しまれていたはずの
ゴリラのぬいぐるみを、やすやすと廃品回収に出し、
しかもその哀れな姿が人目につくように運び去るのを
許すとは。
まだいろいろなことを夢見て信じている小学生の彼女が
受けた心の傷は、決して小さなものではなかったはずです。
そりゃあ店にしてみれば、たしかにずいぶん昔から
ありましたし、古くなって不要になったのかもしれません。
でも、生き物をかたどったぬいぐるみなのですから、
誰かにあげるとか、捨てるにしても人目につかないように
するとか、せめて命あるものに準じるくらいの扱いをして
やれなかったのでしょうか。
なにか、この店の人々の心の冷たさを垣間見た気がします。
この文章は「とっておき!!のねごと。」からのものです。
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