「成田新幹線」を知っていますか。
東海道新幹線の開通からまだ間もない1971年、
「全国新幹線鉄道整備法」が成立し、当時すでに建設中だった
山陽新幹線(新大阪-博多)に続いて3つの新幹線が
新たに建設されることが決まりました。
東北新幹線、上越新幹線、そして成田新幹線。
成田空港の開港にあたり、都心から遠く離れているという
ハンデを補うための切り札としての計画されたこの成田新幹線。
下の地図に赤で示したルートが計画されていました。
東京駅から東京湾岸に出て地下鉄東西線に並走、そのまま一直線に
千葉ニュータウンを経由し、成田空港まで最短30分。
当初6両編成で一日30往復以上の運行を計画していました。
しかし騒音を懸念する沿線住民や自治体の反対のほか、空港建設に
反対する左翼過激派も新幹線反対運動に加わったこともあり
国は最終的に計画を断念。成田新幹線は幻となってしまいました。
しかし、意外なところに成田新幹線の夢の跡は残っています。
東京駅京葉線ホーム。
実はここは、成田新幹線の始発駅として計画されたものでした。
京葉線の開業にあたり、新幹線用の駅の設計を手直しして建設されたため、
ホームが異常に長かったり、線路間の幅が大きかったりと
妙なゆとりがあります。
コンコースも妙に広々。やはり新幹線仕様のようです。
また、成田空港のほうにも名残があります。
成田空港第一ターミナル地下の駅は、
空港建設当初から新幹線用に準備されていたもの。
つまり駅そのものと空港の外に出るまでの路線(成田空港-成田市土屋)は
完成していたのですが、いつまでたっても来ない新幹線のために
放置されていました。
1987年、それを知った石原慎太郎運輸大臣(当時)が活用を指示、
いまはJRと京成が半分ずつ使う駅になっています。
そう、成田エクスプレスとスカイライナーが到着するあの駅は、
もともと新幹線のために作られた駅だったのです。
そして、途中にも成田新幹線の名残があります。
下の地図で青いラインで示されたルート。
今年(2010年)7月から新しいスカイライナーが通るルートです。
見ると地図の右半分が成田新幹線の赤いルートと重なっています。
新しいスカイライナーは、京成上野-高砂は京成電鉄、
高砂-印旛日大前は北総鉄道に乗り入れて走ります。
(京成電鉄HPより)
そして印旛日大前から先は、今回新たに建設される成田新高速鉄道に
乗り入れ、上に書いた完成済みの元・新幹線用の路線につながる形で
空港に乗り入れていきます。
成田新幹線は、上記の北総鉄道と平行して走ることになっていました。
線路や駅のための土地がこの地域の開発当初から確保されていました。
そして北総鉄道終点の印旛日大前から先は単独で東に向かい、
空港第一ターミナル地下の駅に滑り込む予定でした。
つまり今回、印旛日大前から新たに開業する10kmあまりは
まさに成田新幹線そのもののルート。
残念ながら今回開業するのは単線となってしまいましたが、
新スカイライナーはこの区間を最高160km/hで走ることになり、
日暮里から成田空港までを最速36分で結ぶことになります。
(しかし単線を160km/hっていったい…。)
計画からおよそ40年。
成田新幹線の夢は、ずいぶん形が変わりはしましたが
ようやく実を結ぼうとしているのかもしれません。
この文章は「とっておき!!のねごと。」からのものです。
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