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【ねごと。】 第九に泣く。

2010.01.01

 

 

不覚にも、泣いてしまいました。

クルト・マズア指揮、NHK交響楽団の「第九」。

今回の「第九」、なにがよかったといって
まず第三楽章の素晴らしさは特筆すべきものでした。

 

第九にとっての第三楽章というのは、第四楽章のいわば”前座”であり、
妙にセンチメンタルなフレーズをもったいぶって歌いあげていく退屈なもの。

少なくとも私にとっては、その程度の意味しか見いだせない曲でした。

しかしそれをクルト・マズアはあっさりと片づけてしまいます。
歌いあげるでもなくテンポを揺らすでもなく、ただ粛々と淡々と。

ただ粛々と淡々と演奏することで、驚くほど躍動的になりました。
クルト・マズアは、”片づける”ことによってこの楽章に
新しい生命を吹き込んだのです。

そして第四楽章。

ベートーヴェンがシラーの詩を借りて訴えかけた世界へのメッセージが、
これまで聴いたどの第九よりも圧倒的な力で迫ってきます。

抱き合おう、もろびとよ
この口づけを全世界に
兄弟よ、この星空の上に
父なる神が住んでおられるに違いない

諸人よ、ひざまついたか
世界よ、創造主を予感するか
星空の彼方に神を求めよ
星々の上に、神は必ず住みたもう

キリスト教信者ではあったものの、現実の教会制度には懐疑的であった
ベートーヴェンが、”真の神”の存在を示し人々に呼びかけるクライマックス。

ベルリンの壁崩壊のその時、東ドイツでその様子を目の当たりにした
クルト・マズア自身からの強いメッセージでもあるのでしょう。

不意に、涙があふれでてきました。

寝不足の身体に流し込んだ赤ワインがそうさせたのでしょうか、
第四楽章を聴いているうちに、走馬灯のように今年の出来事が
頭の中に浮かんでは消えていきます。

そして
“ああ、彼/彼女にもこの曲を聴かせてやりたかったな”と思った瞬間、
涙があふれて止まらなくなりました。

かつて吹奏楽コンクールで金賞を獲りながら上位大会進出を逃したとき、
ひと目をはばからずに大泣きした記憶はありますが、
一聴衆として聴いた音楽で涙があふれたのは生涯初めてのことです。

年齢を重ね、涙腺がゆるんだせいもあるのでしょうが、
なによりも今回のクルト・マズアの演奏が私の心を揺さぶったのでしょう。

チケット争奪戦に出遅れたため、今回の席は最前列のいちばん左。

バリトンの声が、まるではるか向こうの山を越えてやってくるかのような
バランスを欠いた音ではありましたが、しかしクルト・マズアの指揮は
つぶさに見ることができる特等席。

クルト・マズアはただ粛々と小刻みに指示を出すスタイルでしたが、
内面から湧き出る強靱な意志が伝わるような、迫力ある指揮でした。

2009年の終わりに素晴らしい演奏を聴き、心が洗い流された気がします。

(ちなみに、私が聴いたのは12月23日(祝)の演奏でした。
 前日のような第三楽章の冒頭での演奏の中断もなく、会心の出来であったことは
 演奏終了後のクルト・マズアの笑顔からうかがい知ることができました。)

みんみん(♂)とっておき!!支配人

福岡県生まれの九州男児。中学高校とブラスバンドに所属し、高校のブラスの先輩がタモリさんというのが数少ない自慢です。メディア関係の企業に就職し、転勤族だったため各地のおいしいお店を探して食べ歩きを始めたのがこのウェブサイトの原点。現在は、映像関係の会社を営んでいます。

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