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“岡目八目” にはなりたくない。

2013.05.09

このままでは、人間がダメになってしまうと思いました。

もうずいぶん昔のことです。

私の会社には「半管理職」とも言うべき役職があって
ヒラだけど管理職並みの大きな権限を担うことがあります。

青天の霹靂で地方に転勤になり、その役職に就いたのが
32歳のとき。
「同期トップ」「会社史上でも最年少」などと周囲は
さかんに囃したてます。

しかし、本人としてはまったく嬉しくもなかった。

会社に入ってまだ10年。やっと仕事のなんたるかが
理解でき、モノづくりの面白さがわかってきたところ。
私のつくるモノに対する手ごたえも大きくなり、さあ
これからというところです。

なのに現場を永久に離れ、これから管理職への階段を
登れと言われたに等しいのです。ここで暴れようかと
思いました。

しかし周囲の説得を受け入れ、赴任したのが6月。
西の小さな街には、この季節だけの青空が広がっていました。

ところがこの「半管理職」、なってみるとすごいのです。
その職場での権限たるや、後輩たちに及ぼす影響力たるや。

小さな街の小さな職場ですから、私のグループは直属の
上司1人と後輩たち10人だけ。ほとんど思いのままに
職場を動かすことができるのです。周囲も巻き込んで。

しかも「岡目八目」とはよく言ったもので、後輩たちの
仕事を傍から見てみるとどこが悪いか、どうすれば
良くなるかは一目瞭然にわかってしまいます。

これには驚きました。
ここをこうすればいい、なんて的確なアドバイスが
まるで神のようにできてしまうのです。

もし自分がやってもちゃんとできないであろう仕事を、
上から偉そうに批評し、アドバイスをすることが日常と
なったのです。

これではいけない、このままでは人間が腐ってしまう。

そう思ったのはこの時でした。

モノを作りたくてこの仕事を選び、それまでわずか
10年ですが歯を食いしばってやってきたことで
つかみかけたものがありました。
そして一生の仕事にしたいと。

この「半管理職」を続け、分かったようなことを言い続けて
いれば、社内での”出世”の階段は登れるでしょう。

しかしそれはモノのつくり手としての「死」を意味しないか。

あなたの職場にも、必ず「わかんないんだけどさぁ」と
話の頭につけて語りはじめる人間がいることでしょう。
そして次に持ち出すのは自分の経験ではなく他人の例。

どこかで聞いてきた話を右から左へと流すことで
社内を渡り歩いていく、コンサルタントのような生き方。

私なんかからすると、
「ついこないだまで、こんまいモノを作るのにすら
 半べそかいてたくせに、偉くなっちゃってまあ」
なんて言いたくなります。(もちろん言いませんが)

作り手を志し、それを一生の仕事と誓ったからには
他のすべてを犠牲にしてもこだわって生きていこう。

その想いが、いまの私につながっています。

恵まれてなんかいません。
傍から見たらとても幸せには見えないかもしれません。

でも、いま私は胸を張ってこう言えます。

「私にはこれが作れます。あなたにはいま、何が作れますか。」

 

 

 

 

この文章は「とっておき!!のねごと。」からのものです。
http://www.totteoki.jp/negoto/

みんみん(♂)とっておき!!支配人

福岡県生まれの九州男児。中学高校とブラスバンドに所属し、高校のブラスの先輩がタモリさんというのが数少ない自慢です。メディア関係の企業に就職し、転勤族だったため各地のおいしいお店を探して食べ歩きを始めたのがこのウェブサイトの原点。現在は、映像関係の会社を営んでいます。

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