年齢を重ねて何が悲しいかというと、身震いする
ほどの感動を味わえなくなってくることです。
感性よりも理屈が先に立ってしまうというか、
過去の経験とまず比較してしまうことで瞬時に
かつ純粋に受け取れなくなってしまうというか。
しかしきょうは身震いするほどの感動をしました。
まさに、後世に語り継がれる名演奏でした。
まったくのお世辞抜きに。
きょう、千葉・習志野で開催された
ニューフィルハーモニー千葉の定期演奏会。
以前仕事で知り合った広島出身の指揮者・
山下一史さんが音楽監督に4月に就任して
初めての定期演奏会ということで聴きに。
しかしこれまで聞いたことのないオケであり、
名前そのものもアマだかプロだかわかりません。
正直、あまり期待はしていませんでした。
ところが、山下一史自身が練りに練ったという
プログラムは実に巧妙。
チャイコフスキーで統一され、
歌劇「エフゲニー・オネーギン」のポロネーズ、
弦楽のためのセレナード ハ長調 作品48、
そして交響曲第5番 ホ短調 作品64。
タイトルは知らなくても、誰しもが聴けば
「ああこれね」と思い出せる曲で固めてあるの
です。これは客層からしてもちょうどいい。
開演前のトークで山下一史が
「3日間みっちり練習し、いろいろあった」と
語った意味は、最初のタクトが振り下ろされた
瞬間に明らかになりました。
音の出が最初から最後まで完璧に揃っているのです。
弦はきらびやかにうねり、金管はいきいきと輝き、
木管は軽やかにさえずる。
ホルンが音をはずしかけたり、フルートが時々
もたついたりといった個々の技量の限界はあり、
編成の弱さによるサウンドの薄さもあるものの、
総体として持てる力の150%は出し切った、
そんな素晴らしい演奏でした。
ほかの観客も同様に感じたようで、途中の休憩
時間には10月の次回定演の優先予約の受付に
行列ができたほど。そして演奏後の拍手で多くの
人が腕を上げて拍手をしていたのが印象的でした。
10月には改名し「千葉交響楽団」になるとのこと。
名は体を表す。
このオケは山下一史のもとで間違いなく化けます。
今後がとても楽しみです。
この文章は
「とっておき!!のねごと。」からのものです。
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