「ガンツケ」。
ヨソでは怖い言葉ですが、佐賀では食べ物の名前です。
佐賀から東京に出てコンサルタントとして成功し、お金持ちに
なった伯父がいたのですが、彼が最高に喜ぶ佐賀みやげが
当時たった500円のこれでした。
「がんつけ」とは、小さなカニをすりつぶして塩で漬け込んだもの。
「真がに漬け」などとも呼ばれているようです。
干満の差が大きい有明海には、なぜか左のハサミだけが
極端に大きい「シオマネキ」という名のカニがいます。
そのハサミを振りかざすようすが手招き、つまり満潮を招いて
いるように見えたためその名がついたのでしょう。
昔はそこらじゅうにいたこのシオマネキを各家庭ですりつぶして
発酵させ、ご飯の友にしていたそうです。
すりつぶし具合によって「あら」と「つぶし」があり、「つぶし」は
ペースト状なのですが「あら」はハサミや甲羅が原形をとどめて
いてちょっとグロテスク。
しかももんのすごく塩辛くて、私なんか一口で嫌になるほど
しょっぱかったのですが、筑後川の河口の旧川副町に生まれ
育った伯父にはまさにソウルフードであり、東京では当時
決して手に入らない郷土の味でした。
このがんつけを帰省みやげで持って行くと、伯父は喜んで
当時高価だったウイスキーを何本も持たせてくれました。
エビでタイを釣る、ならぬ、カニでサケを釣っていたわけです。
その伯父の七回忌ももうすぐ。
久しぶりに見つけた「がんつけ」はちょっとしょっぱい思い出を
呼び起こしてくれました。
そうそう、最近はパスタや炒飯の隠し味に使うそうですよ。
この文章は「とっておき!!のねごと。」からのものです。
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