(日能研のHPより)
日々満足に食べられない人がたくさんいる最貧国・
バングラデシュの穀物自給率は97%もあるのに、
豊かな日本の穀物自給率は26%しかない。
どうしてこういうことが起こるのか説明しろという
中学の入試問題です。
あまりにも難しすぎて、私にもわかりません。
問題はこうです。
日本の穀物自給率は26%(2009年)です。 穀物自給率は次の方法で算出できます。
この穀物自給率を他国と比較すると、例えば しかし、バングラデシュはアジアの中でも最も なぜ、このような状況なのに日本よりも 穀物自給率の算出方法から考えられる理由を |
日本について言えば、説明は難しくありません。
日本の穀物自給率が低い原因のひとつは肉食化が
進んでいること。つまり牛や豚や鶏を育てるために
穀物を大量消費しています。
また肉食化とほぼ同義ですが、食卓の西洋化すなわち
パン食化が進んでおり、その原料の小麦を海外に
依存していることも大きな原因。つまり、農業における
需要と生産のミスマッチを挙げることもできるでしょう。
さらに経済学的に見るならば、日本は工業製品を輸出して
外貨を稼ぎ、その外貨で食糧を輸入して国民を養って
いるから穀物自給率は低くなる、ということもできます。
ところが、バングラデシュの穀物自給率97%を説明する
のは難題なのです。
なにしろ日本の4割足らずの国土面積に 1億7,000万人が
暮らすという、明らかな人口過剰な国。
その国がほぼ100%穀物自給できている一方で、なぜ
最貧国なのかを説明できなければ、日本との比較が
できなくなってしまいます。
うーん、困った。
ここでズルをして日能研の「解答と解説」をチラッと。
[解答例]
バングラデシュでは穀物の国内消費量が少ないため、 |
おいおい。
これは算数の答えではあっても、社会の答えではありません。
こんな答えを「解答例」として堂々と載せるところが日能研。
いかにも受験屋のテクニック的な発想です。
さて、調べてみるとバングラデシュのコメはほとんど輸出されて
いないとのこと。とするとタイのように、コメが輸出に回されて
しまうために貧しい農民に回らない、という説明ができません。
一方、絶対的に「足りない」のであればバングラデシュ国外
からの輸入が行われるはず。1993年の大凶作によって日本が
260万トンものコメの緊急輸入をした際、まずい飯を食った
記憶がある人も多いことでしょう。
つまり「足りない」のであれば当然輸入が行われ、穀物自給率は
下がるのです。
しかしバングラデシュでは97%の自給率。
しばらく考え込んでしまいました。
やっとわかりました。
結論から言うと、前提が違ったのです。
問題は市場の閉鎖性です。
バングラデシュの穀物市場が閉鎖的で、輸出も輸入も行われない
のだとしたら穀物自給率は限りなく100%に近づいていきます。
なぜならば「それだけしかない」のですから。
国内にある穀物はすべて消費されてしまうのです。
餓死者は大量に出ていないけど、決して満足できるだけの
水準にはない、ということをこの97%という数字から
読み取るべきなのでしょう。
(3%はおそらく食糧援助か高所得者層の嗜好品としての穀物でしょう)
つまり、
日本は肉食化が進んでいて、牛や豚など家畜を育てる 飼料としての穀物が大量に輸入されているために 穀物の自給率は低くなる。 一方でバングラデシュは人口が過剰であり、なおかつ 穀物市場が閉鎖的であるために生産された穀物は そのまま食糧として国内で消費されてしまう。 そのため穀物自給率は結果的に高水準となる。 しかしこの場合、穀物自給率が高いことは決して 豊かであることを意味しない。 |
というのが模範解答でしょうか。
しかしこれは中学受験の社会科の問題。
この問題を出した学校って、小学6年生に
どう答えさせるつもりだったのでしょうか…。