あの「一蘭」の、はるか上を行くおいしさの店でした。
麺は、硬めにゆでたそうめんのようなしゃきっとした芯を感じる歯ごたえ。スープは、よりうま味が強くまろやかです。
「一蘭」といえば、地元福岡をはじめ東京に15店舗、直近では広島にもオープンするなど全国に32店を展開する有名店。
しかし、「一蘭」には前身となる同名の店がありました。
福岡県小郡市でひっそりと営んでいたこの「一蘭」は、知る人ぞ知る店だったのですが、当時のオーナーが体調を崩し、廃業することに。
しかし廃業を惜しむ常連客が暖簾を譲り受け、新たに別の場所で店を展開したのが現在の「一蘭」なのです。
まろやかで臭みのないスープと唐辛子のたれによりそれまでにないとんこつラーメンの境地を開いたとして「一蘭」は絶大な支持を受け、一気に全国展開します。
しかしその過程で店のありかたと味に疑問を持った人々が店を離れていきます。彼らは、体調を回復した元のオーナーとともに、本来の「一蘭」の味を取り戻すべくあらたに「鳳凛(ほうりん)」を立ち上げて今日に至るのです。
現在「鳳凛」は2店舗。私が行ったのは福岡の郊外、二日市温泉のはずれにあるロードサイドの店です。
大きな看板があるわけでなく、宣伝をしているわけでもないのにほぼ満席になっているのはやはりその味のおかげでしょう。
最初に食べたのは「キクラゲらーめん」。
唐辛子のたれは「少なめ」で注文しました。単に普通のらーめんにキクラゲをてんこ盛りしただけですが、ラーメンそのものの味を変えずにコリコリした食感も楽しめていい取り合わせ。
最初に口に運んだスープはとんこつ特有の臭みがなく、まろやかな口当たりとうま味のバランスが絶妙。
麺もゆで加減が選べますが「ふつう」でちょうどよい感じ。しゃきっとした歯応えでぶつぶつっと切れていく食感が楽しく、麺そのものの味もしっかり。
とんこつというジャンルを超えて、これ以上の味のラーメンを探すのは、全国でもなかなか難しいのではないでしょうか。
あまりに印象的だったので翌日ふたたび訪れて食べたのは「特製らーめん」。
2012年1月現在、通常1,000円のところを850円での提供ということで頼んでみましたが、他のラーメン店によくある「全部のせ」とは違って節操があり、辛子明太子などは乗っていません。
もやしと味付け玉子1個とチャーシュー4枚が乗り、ネギが2倍、麺が1.5倍、スープが1.2倍とのこと。
もやしから水が出ることもなく、ちゃんとバランスが保たれたまま「特製」の名にふさわしいものとなっていました。
サイドメニューの餃子は大きめの6個が350円。これが異常なほどジューシーで、最初のひと口で噛むと必ず肉汁がほとばしります。いや、ほとばしるというよりも水鉄砲のように飛び散るといったほうが正確。隣の席まで飛んでいきますから要注意です。
皮は厚めでもちもちこんがり。具もニラがたっぷりで味付け薄め。なかなかコストパフォーマンス高めなだけに肉汁の”詰めすぎ”が玉にきずでしょうか。
とにかくあの「一蘭」のルーツであり、本来の味を守り続けていると主張するだけあって、その味は現在の「一蘭」を軽く凌駕しています。
しかし「一蘭」が大量の広告を出稿することもあり、雑誌などで「鳳凛」が紹介されることはほとんどないようですが、福岡を訪れることがあったらとにかくぜひ一度訪れてみてください。
目が覚めますから。
「鳳凛(ほうりん)」(福岡筑紫野・ラーメン)
https://tabelog.com/fukuoka/A4003/A400301/40018781/