【閉店しています】
よもやこんなところに、こんな店があろうとは。
というのも、この店があるのはセンター街のど真ん中。歩くのはガラの悪い若年層かおのぼりさんばかり、店も安っぽいチェーン店ばかりになってしまったこの通りは、大人が近寄る場所ではなくなっています。
そのセンター街のど真ん中に、まさかまともな和食の店が残っていようとは思いませんでした。
店があるのは、センター街入口のゲートをくぐってすぐ右側のビル。壁から大きな提灯がぶら下がっているのですが、気づく人はいないでしょう。
ところがこの古い雑居ビルの、レトロなエレベーターに乗ってたどり着いた先はまるでログハウス。
壁面は丸太や幅広の一枚板が全面に貼りられ、テーブルもまた厚手の天然木の一枚板。渋谷という街から、どこでもドアを使って飛んできたかのような錯覚に陥るほどのギャップがあります。
煮魚と焼魚が日替わりで用意されるランチは、毎日7種類。
私が最初に訪れた日の煮魚定食は銀だらだったのですが、少し甘めで甘辛く煮込まれた銀だらには、丁寧に面取りされた里芋、糸のように細かく切られた生姜など、ひとつひとつに手抜きがありません。
これに、おからの小鉢、茶わん蒸し、漬物、味噌汁、ごはんがついての定食となっています。
別の日の焼魚定食は塩サバ。
身のほうを表にして提供される塩サバは焼き加減が絶妙で、身はぱりっと仕上がり、中はほくほく。皮を見ても焦げがほとんどありません。いわゆる遠くの強火で、目を離さずにじっくりと焼いたことがわかる丁寧な焼きです。
おからの小鉢と茶わん蒸しは変わりませんでしたからおそらくこの二つは固定されているのでしょう。
茶わん蒸しにギンナンが入ってなかったのは残念ですが、まあコスト面から難しいのでしょう。また、ごはんがごわっとしていて塊のようになっていたのは、たまたまこの日の炊き加減がそうなってしまったのか、炊飯器のタイプが古いのかわかりませんが、最近なかなかない食感にむしろ懐かしさを覚えました。
店に上るエレベーターもかなりレトロな雰囲気を醸し出すなどビル自体がかなり年季が入っているのでしょうが、それでもこのセンター街の入口すぐの場所では家賃も相当なもののはず。
その場所でこれだけのものを手抜きせずに提供し続ける姿勢には脱帽です。
ぜひ一度訪れ、その”どこでもドア”をくぐった衝撃と、センター街とは思えぬ丁寧な味を試してみてください。かなりのおすすめです。
「海鱗丸」(渋谷・海鮮料理)
https://tabelog.com/tokyo/A1303/A130301/13092473/