ほんとにこの値段でやっていけるのか—。
それが、この店を訪れたほとんどのひとが抱く正直な感想でしょう。
ラーメン屋が通りを埋めつくす早稲田通りから脇道に入った所にある、一見、街の洋食屋のような小さな店。フランス料理でも大衆的な店であるビストロ形式の店なのですが、その量も質もハンパではありません。
ディナーの前菜だけで普段の昼食の一回分はあろうかというほどのハンパでない量の多さ。その一方で非常に繊細な味と丁寧な盛りつけ。そして帰りに傘を玄関にさりげなく立てかけてくれるような細やかなサービス。
前菜とメインをそれぞれ数種類から選べるというプリフィクス形式のコースなのですが、それでランチが1,050円、ディナーが2,100円という基本価格設定なのですから、信じられません。
今回私がディナーで食べた「仔羊の背肉ロースト」は、この店の”量と質”を象徴するようなメニューでした。通常、仔羊の背肉・ラムチョップは肋骨一本ごとに切り分けられ、食べやすい形に整えてあるのですが、出てきたのはなんと肋骨二本ごとの”塊”。
しかもそれがふたつ、小さめの皿の上にそびえ立って出てきます。これを見て驚かないひとはいない、と断言できるほどのすさまじい量です。量が多いこともあって味付けは控えめで上品。焼き加減も申し分なく意外にもぺろっと食べられてしまうのも不思議です。
このメニューは追加料金735円が必要でしたが、それでも「なんじゃこの安さはぁぁぁ!!」と叫びたくなるほどの満足感の非常に高い一品でした。
その前の前菜「生ハム・コッパ・スペイン産チョリソー鴨のリエットの盛り合わせ」もまたけっこうな量でした。普通なら何人かでつつくような量を、小さな皿にてんこ盛り。メインの鴨のリエットも添えられたパンに乗せきれないほどありましたが味は意外とあっさり。量は多いですが、干しイチジクやピクルスもあり、様々な味を楽しめるようになっていました。
そのほか、「クリュディテ(5種類の野菜の盛り合わせ)」は、前回も今回も連れが頼んだのですが、前回のランチでもかなり量が多かったのに、ディナーはさらに大量。
コースの総額に比例して2倍あるんじゃないか、というほどの量にただただ圧倒されていました。
また、この日の魚料理である「メダイのポワレ」も切り身がふた切れ分はあろうかというほどの大きさ。下に敷くようにして盛りつけてあるラタトゥイユには生クリームが加えられて酸味が抑えられ、淡白な白身とケンカせずに融け合うような味に仕立てあげられていました。
何を頼んでも圧倒的な量に、店内からは次々と驚きの声。続いて聞こえるのは「おいしい」との声。
ほんとにこの値段でやっていけるのだろうか、という疑問を抱えたまま客は笑顔で帰っていくのです。
デザートは別で525円。飲み物も別で315円から。
しかしそれでもディナーでワインを一本頼んでも2人で1万円前後しかかかりません。
ここまでコストパフォーマンスのいいフレンチの店は、渋谷の「コンコンブル」とたぶんこの店くらいのもの。ほとんど奇跡のような存在です。
それだけに予約は必須。
週末の希望の時間を取ろうとするなら、遅くとも2週間前に予約を入れなければなりません。
ディナーならともかく、ランチでもこの状態なのですからちょっと異常な気がしますが、それでもここの料理を食べたい、という人が多いのですからしかたないと言うしかないでしょう。
ぜひ困難な予約を取ってでも行ってみてください。
のけぞりますから。
「ラミティエ」(高田馬場・フランス料理)
https://tabelog.com/tokyo/A1305/A130503/13004131/