これまで私が食べてきたなかでも、5本の指に入る餃子です。
とにかくふんわりとしていて、しっとり。
なんとも不思議な餃子なのです。
よく「肉汁じゅわっ」なんていう餃子がありますけど、あれはほとんどの場合、皮を包むときにスープや水を封入しているだけのこと。
それはやや小賢しいテクニックであって料理の腕とは本質的に違う気がします。
ところがここの餃子は大きく、なかがぎっしり詰まっていそうに見えてふんわり。
にんにくがややキツめではありますがそれがまたいいアクセントになっています。
餃子は西に行くほど小さくなる、という“法則”がありますが、この店のものは関東での標準的な大きさよりさらにやや大きめ。それでいて一人前5個350円と言うのですからそのお得さにびっくりしてしまいます。
ただ、店の場所は最悪。
埼玉の川口駅からバスで15分。さらに歩いて10分。
なんでこんな住宅街のまんなかに、というほど何もない場所にぽつんとあり、ぱっと見、ここでまともな料理が出てくると信じる方が難しいでしょう。
この店を営むのは、壮年の兄弟らしきふたり。
風の噂によれば銀座アスターにいたとのことですが、たしかに本格的な修業をしていなければこうした味は出せないでしょう。
ただ、悲しいかな埼玉の住宅地。
本格的な中国料理を求める客が周囲にそうそういるわけもなく、メニューはレバニラや麻婆豆腐やタンメンといった庶民的メニューが並びます。
全体的に量は多め。
「上海麺」はエビや豚肉、チンゲンサイなどを醤油味で炒め、とろみをつけて麺の上にかけたもの。
かなり大きめの丼に盛られた麺は、中国料理の本格的な店では本来のゆで加減なものの、現在の日本人の好みとしてはちょっと茹ですぎと感じられるかもしれません。しかしバランスが取れていておいしく、コストパフォーマンス高めの一品です。
「麻婆豆腐定食」は、まず丼飯と張り合うほどの麻婆豆腐の量に驚かされます。
味はかなり辛め。激辛の範疇に入るでしょうか。量が多い分スープ的な感じで食べるというよりすする感じです。
なお麻婆豆腐に限らず、定食は丼飯がつきますのでその分コメの品質が低くなってしまっているのがちょっと寂しいところ。これが都市部であれば客の要求するコメの量が減るでしょうから、その分品質も上げられるだろうに、と残念です。
なお、もちろん「餃子定食」もあり、650円と安いのですが一人前5個というのは微妙。
安いのですからいっそ8個つき850円といったもうひとつの餃子定食もあれば嬉しいのに、と思います。
先日、「孤独のグルメ Season5」で餃子のおいしい食べ方として、胡椒を入れた酢につけて食べる、というのが紹介されていましたが、この店の餃子こそその食べ方がいちばん合っている気がします。
この餃子を食べるために時間と交通費を費やして来るべきかどうかはかなり議論の分かれるところ
でしょうが、私としては餃子好きにはぜひ一度は味わってみてほしい他に類を見ない餃子だと思い
ます。
また、機会があればぜひ一度、大人数でコースを予約して、この店の本当の実力を知りたいもの
です。
「城華」(埼玉川口・中国料理)
https://tabelog.com/saitama/A1102/A110201/11007009/