【閉店しています】
うまい方法があるもんだな、と感心しました。
この店の「チキンカツみぞれあんかけ」のことです。
ふつうなら、熱々のカツの上に大根おろしの入ったやや冷たいつゆをかけるのですが、この店は逆。つゆのほうが熱いのです。
日替わりメニューであり、数が出ることを見越してなのでしょう、カツはある程度作り置き。しかし熱いつゆを全体にかけることにより、食べるときにはカツまで熱々であるかのような「錯覚」を感じてしまうのです。
もちろん「錯覚」だからといって悪いとは言いません。
これは客が多いからこそ思いつくアイディアであり、この合理性によってより早く、より安く提供できるのですから。そして実際にお手頃価格でおいしい。
この店があるのは築地市場内。
とはいえ、観光客でごった返す「魚がし横丁」とはかなり離れた青果部門の近くにあります。
入り口も、ターレ(ターレットトラック・三輪貨物)が目まぐるしく行きかう通路のすぐ脇。隣は倉庫でパレットなどが積まれていてちょっと見ただけではわかるはずがない、という場所です。
しかし玄関を入ると店内はコの字型の大きな空間。
黒一色でまとめられた調度品は落ち着きがあり、配置にもゆとりがあります。
パイプでできた丸椅子の後ろを人ひとり通れるかどうかといった魚がし横丁の店とは大違いです。
しかも「市場の厨房」と言うからにはちゃんと新鮮な魚介を活かした料理もあります。
食べたのはランチの日替わり海鮮丼のひとつ「づけサーモンとイクラ」(1,200円)。
大ぶりのサーモン4枚とたっぷりのいくらが乗せられ、ごはんが見えません。わさびも上質のものです。
サーモンの漬け具合もほどよく味もしっかりしていて飽きることがありません。
場外で一見さんを狙って客引きする店とは大違い。
また、朝6時の開店から午前11時までの朝定食もシンプルながら650円と安くておすすめです。
すっかり観光地化してしまい、外国人観光客で溢れ返るようになってしまった築地。
あくまで市場の雰囲気を味わいに来たのであって、高い飯を食いに来たんじゃないやい、というかた。あるいは本当に市場で働く人々と同じ食事を体験したいかたはぜひこちらにお越しください。
スペースもゆったりしていて、外国人もおらず、こんなにくつろげる場所はほかにないですから。