こうしたまっとうな仕事をし、しっかりおいしいものを作れる店が、ちゃんと残っていける世の中でないといけないな、とつくづく思います。
築地のはずれにある渡辺商店の玉子焼き。
新鮮な魚介類を仕入れに来る寿司店のために、築地に玉子焼きの専門店が並んでいるのはみなさんご存じの通り。
しかしこれまでいろんな有名な店の玉子焼きを食べましたが、私にはなぜかピンと来ませんでした。
そこで知る人ぞ知る築地の鉄人・なべひろさんに教えてもらったお勧めの一軒がここ、渡辺商店。
住所こそ築地ですが、場外市場からは離れたニチレイの本社ビルの北。
聖路加病院に行くほう、と言ったらわかりやすいでしょうか。
その細い路地にある古い木造家屋の小さな店です。
父と娘のふたりの職人が焼く玉子焼きは甘め。
すべて当日に卵を割り、ひとつひとつ手で焼いて丁寧に作っています。
これって当たり前のように感じるかもしれませんが、実はこうして玉子焼きをつくっているのはいまや築地でもここだけ。
ほかのほとんどの店が「液卵」という、すでに割った状態の卵を養鶏業者から仕入れていて、焼くのも機械任せの自動だとか。
場外市場で、職人が焼いている姿が客から見える店もありますが、実はそうした手焼きのものはすべて得意先の割烹や寿司屋に行くものであって、すぐ目の前の店で一般客に売られることはないのだそうです。
その違いが、まさに味に出るのでしょうか。
しっとりとしてどっしりとしてなおふっくらしてて、冷めてもなおおいしい。
ちょうど先日、高校の同級生が集まる会があったので、買っていってみんなと食べたら大好評。この甘さがちょうどわれわれ九州人の味覚のストライクゾーンど真ん中だったようです。
とはいえ、九州の醤油や鶏卵素麺のようなベタベタの甘さではありません。しっかりと芯のある甘さ、と表現すればいいでしょうか。
なお、甘さを抑えた「薄味」もあるとのことで、後日あらためてもうひとつ買って食べてみましたがこれもいい塩梅でしっとりおいしく、ややあっさり。やみつきになりそうです。
みなさんもぜひ一度食べてみてください。
これが本当の玉子焼きだと実感できますから。
「渡辺商店」(築地場外・玉子焼き)
https://tabelog.com/tokyo/A1313/A131301/13042059/