なによりもネーミングが絶妙です。
「ひみつくじら」。
1986年から始まった商業捕鯨モラトリアムによってすっかり縁遠くなってしまった鯨ですが、実は東京の目と鼻の先で現在も捕鯨が行われていることはほとんどの人が知りません。
千葉・房総半島の南にある和田浦。
ここでは夏の間、ツチクジラという鯨が水揚げされ、鯨肉などに加工されて全国に出荷されています。
この、和田浦の鯨を直接仕入れているのがこの店。
捕鯨会社との特約で、解体直後のいい部分だけを生のまま直送してもらっているのです。(夏の漁期のみ)
生の鯨の肉は貴重です。
私たちが普段口にする鯨は、ほとんどすべて冷凍。
調査捕鯨の“副産物”であるミンククジラやイワシクジラかニタリクジラ、それにアイスランドから輸入されるナガスクジラを含めてほぼすべてが冷凍なのですから。
この店では、直送されてくる新鮮な鯨の肉を、カツや竜田揚げなどの伝統的な調理法のほかに様々なアイディアで新たな味わいを見出しています。
まず驚いたのが刺身でした。
というのも、ツチクジラはほかの鯨よりも血が多く、刺身にしてもすぐに血がにじみ出てきて見た目が良くないのです。それがまったく血がにじみ出てない。
また私自身、和田浦には何度も通い、当地の鯨料理の店で何度も鯨料理を食べた経験からしても、ツチクジラは加熱してこそおいしい鯨だと思っていました。
ところが、この店の刺身だけは別物。臭みもなく、柔らかくうま味だけが舌に残る感じ。
九州出身で、鯨は刺身でよく食べてきた私が驚くほどのおいしさでした。
そのほか、燻製も衝撃的なおいしさ。
刺身とは違い、濃縮されたうま味に香ばしさとちょっとした筋の感触が加わり、酒肴として絶品です。
もちろん、竜田揚げもステーキもかなりのレベル。
今回、料理を5,000円でおまかせにしたのですが、バジルや柚子など洋風和風いろんな味で楽しませてくれ、一緒に行った全員感心することしきりでした。
東京メトロ千代田線根津駅から北に6分ほど歩いて左に入る路地にある小さな店ですが、鯨を語るならこの店に行かずして語ることは許されないのではないかとさえ思います。
ランチタイムには、竜田揚げ定食など気軽に食べられるメニューもありますのでぜひ一度行ってみ
ください。
※房総におけるツチクジラの漁期は毎年6月20日から
8月いっぱいで決められた頭数が捕れれば終了です。
秋・春のミンククジラの生肉が入ることもありますが、
基本的にはこの時期以外は冷凍のものとなります。
ただ、冷凍技術の向上でほとんどの人は気づかないと
思いますが。
「ひみつくじら」(根津・くじら料理)
https://tabelog.com/tokyo/A1311/A131106/13179781/